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Webブラウザ上でリッチな3Dグラフィックスを描く技術といえば、長年「WebGL」が主流でした。しかし、2023年頃から注目を集めているのが**「WebGPU」です。これは、従来のWebGLに代わる次世代のグラフィックスAPI(WebAPIの一種)**で、より低レベルかつ高性能なアクセスを提供するのが特徴です。
WebGPUの正体とは?
WebGPUは、ChromeやEdge、Safari(iOS含む)などモダンブラウザに実装され始めているブラウザAPIで、Direct3D 12(Windows)、Metal(macOS/iOS)、Vulkan(Android/Linux)といったネイティブGPU APIを抽象化して扱えるようにしたものです。
つまり、JavaScriptからスマートフォンやPCのグラフィックスハードウェアをより効率的に制御できる新しい仕組みなのです。これは従来のWebGLよりもより細かくGPUリソースを扱えるため、ゲーム、科学可視化、AIビジュアライゼーションなどにおいて大幅な性能向上が見込まれます。
Three.jsとの関係
Three.jsは現在もWebGLベースで動作していますが、すでにWebGPU対応の試験的なレンダラー(WebGPURenderer
)が開発されています。これを使えば、Three.jsの簡潔な記述スタイルを維持しつつ、WebGPUの恩恵(マルチレンダーパス、高精度のテクスチャ、レイマーチングなど)を受けることが可能です。
現時点ではWebGPUに対応するThree.jsの機能は一部に限られていますが、将来的にはWebGLとWebGPUの両対応を目指す方向で進んでいます。
iPhone / Android での対応状況
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**iOS(Safari)**は、MetalベースのWebGPUがSafari 17以降で有効化され始めました。ただし、まだ実験的な段階のため、
設定 > Safari > 詳細 > 実験的機能
で手動で有効化が必要な場合があります。 -
**Android(Chrome)**も、VulkanをベースにしたWebGPU対応が進んでおり、
chrome://flags/#enable-unsafe-webgpu
で有効化できます(将来的にはデフォルト有効になる見込み)。
スマートフォンでのWebGPUは、特にWebARやWebゲーム、3D地図など高負荷なビジュアライゼーション用途に活用が期待されています。
なぜWebGPUが重要なのか?
従来のWebGLでは、GPUのパフォーマンスを十分に引き出すのが難しいという課題がありました。WebGPUはそれを改善し、以下のようなメリットがあります:
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より高速で省メモリな描画
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並列処理に優れた設計(コンピュートシェーダが使える)
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スマホからPCまで一貫したパフォーマンス
つまり、WebGPUは「ブラウザをただの閲覧ツールから、GPU活用が可能な計算・可視化プラットフォームへ」と進化させる存在なのです。
最後に
WebGPUはまだ発展途上ですが、Three.jsやスマートフォンとの統合が進めば、これまでネイティブアプリでしか実現できなかったような高精度3Dグラフィックス体験が、ブラウザだけで手軽に実現できるようになります。これからのWeb開発では、WebGPUを前提とした設計が当たり前になる時代が来るかもしれません。